メッセージ / Messages

『夫=夫』監督 山後勝英さんより

山後勝英さん

この作品は「同性婚がしたい」と考えるカップルに向けて、というよりは「足立区が滅びる」とか「生産性が無い」と言う方たちに向けて作りました。

エンターテイメントはメッセージをキャンディのようにコーディングして世に送り出す力があります。ならば私は童話の「北風と太陽」の「太陽」になろうと考えました。もちろん結婚には「喧嘩」だの「倦怠期」だの「愛情が冷める」といった負の側面があります。今回そこはすべてすっ飛ばして「怖くないよ」「同性婚しても世界は滅びないし」「あなたの家庭は壊れないし」「ただただ好きな人と好きな人が平凡な毎日を送って」「ただ日常が過ぎていくだけなんです」そんなメッセージを描きました。日本でも同性婚が早く実現しますようにと。

『変わるまで、生きる』『片袖の魚』監督 東海林毅さんより

東海林毅さん

青森県の皆さま第17回青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバルの開催おめでとうございます。

もう30年以上前のことですが子供の頃、自分のようなセクシュアリティの人間は他にいないのではないかとずっと孤独を感じていました。
自分が生まれ育ったような地方都市には「居場所が無い」と不安を抱える性的マイノリティの人たちが少なからず存在しています。もしもあの頃、こういった映画祭によって身近な性的マイノリティの姿が可視化されていたらどれほど安心できただろうかと夢想します。これからもぜひ映画祭を続けていただきたいです。

今回ご覧いただく一つ目の映画『片袖の魚』はLGBTQ+のT、トランスジェンダーの人物を描いた短編映画です。トランスジェンダーの人物は劇映画やドラマにたびたび登場してきましたが、多くの場合、極端に悲劇的または喜劇的に描かれたり、周縁化された社会の異物として描かれてきました。それでは偏見を再生産し当事者の居場所を社会から奪うことにつながってしまいます。この映画『片袖の魚』では「当事者の表象」を重要視し日本で初めてトランスジェンダー当事者の俳優を全国から一般公募してキャスティングを行いました。

もう一つの短編『変わるまで、生きる』は性的マイノリティの老後をサポートするNPO法人パープル・ハンズが定期的に開催している持ち寄り食事会の様子を取材したドキュメンタリーです。料理と共にそれぞれの思い出の写真を持ち寄ってもらい、変わったことや変わらなかったこと、来し方と行く末について笑い、話し合ったひとときの記録です。時代と共に性的マイノリティに対する社会の眼差しが変わってきた事を知り、より良く変わってゆく未来への想像へとつなげていただければ幸いです。